ガラケーハーモニー
すべては、土の中に埋もれていたガラケーから始まった。2008年。合唱部の部長・湯浅満は、廃校が決まった母校の音楽室で立ち尽くしていた。部員たちは次々と去り、副部長の上原弓子とふたりきりになった合唱部。そんなある日、合唱部の顧問から封筒を渡される。その中には、憧れの先輩・七倉ななみの名前と、携帯電話の番号が書かれた紙切れが入っていた。七倉先輩の番号と思いこんだ湯浅は、すぐに公衆電話から電話をかける。しかし受話器の向こうで応答したのは、聞き覚えのない低い男の声だった。「お前、誰だ?」「そっちこそ...誰ですか?」2025年。ヤクザの世界で生きる広木正ーは、小さな祠の前にいた。そこでふと耳にした着言音。
掘り起こした土の中から現れたのは、古いガラケー。おそるおそる応答すると、電話の向こうには、少年の声。2008年に生きる高校生と、2025年に生きるヤクザ。時空を超えた、ありえない通話が始まる。「人を動かすには、どうすればいいですか?」「.......そんなこと、俺に聞くな。」高校生とヤクザ。交わるはずのなかったふたりが、言葉を重ねて変わっていく。頼りない高校生の湯浅と、生きることに不器用な広木。そんな中、湯浅は広木から衝撃の事実を聞かされる。自分のすぐ隣にいる上原が、2025年の世界では眠り続けていることを。過去と未来。交わるはずのなかったふたりが、奇跡を信じて動き出す。もし、未来を変えられるとしたらーー。時空を超えた歌声が、弓子の病室に鳴り響く。